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「嘘や!たまたまや!これ!これやってみぃ!」
そう言ってメイヴィが差し出したのは、以前メイヴィが三時間かけて解いた知恵の輪。
「い、いやだからたまたま――」
「やれ!今すぐ!」
「わ、分かったよ……まったく……」
今にも暴れ出しそうなメイヴィにラウルは渋々従い、それを手にする。
…………
「そんな……アホな……」
十分後、五つに分解されたそれがラウルの手の中にあった。
「こ、今度はこれや!」
その後、メイヴィは今まで彼女が苦労して解き明かしてきた知恵の輪たちをラウルにやらせたが、ラウルはそれらをことごとく短時間で解いてしまった。
ラウルが真面目にやらないでおこうとすると一瞬でバレ、頭をひっぱたかれるため手抜きもできなかった。
「ぐずっ、ぢぐしょ~!ひっぐ、なんで、解けんねん~!う~!」
そして現在、ポカポカとラウルを殴りつけるメイヴィはもはや半泣きであった。
メイヴィの拳にそこまでの威力は無く、ましてある程度鍛えてあるラウルは痛くも痒くもない。
が、精神的な意味では十分な威力があった。
「た、たまたまだって」
(可愛い……い、いやこんな時に僕は何を……)
全く持って不謹慎だが、メイヴィの泣き顔にはそう思わせるだけのものがあった。
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