2021人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、ありがとう…。」
小さく呟いて秋吉は窓から外を見る様に視線を彷徨わせる。
妙な空気を払拭したくて話しかけたはずなのに、俺が発した言葉はまた車内をなんとも言えない空気で包んでしまったのだった。
*******
花火会場はすでにすごい人だった。
すれ違う人を避けるのも大変で、浴衣の秋吉は下駄ということもあって少し前に進んで振り返ると人混みに流されそうになりながらアタフタしている。
だから人が多いとか下駄だからとか理由をつけて強引に秋吉の手をとった。
すれ違う高校生カップルでさえ自然に手を繋いでいるというのに、なんでいい大人が手を繋ぐのに理由を並べ緊張してんだか…。
自分でも情けない。
秋吉は手を繋ぐ事なんか大した事じゃないんだろうな。
今までの彼氏とも手を繋いだ事くらいあるだろう。
男に手を繋がれ、はにかんだ秋吉の顔を想像して俺は嫉妬を覚える。
最初のコメントを投稿しよう!