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「ふーん…まあ、いいです。今度じっくり聞きますから、ね、秋吉さん!」
「ははははっ…。」
彼女はまた秋吉に話を振ってからお目当ての本をすでに決めていたらしく、それを手に取ると「お先に」と去って行った。
「……。」
「……。」
嵐のような黒木さんという人が去っていった後、俺達の間には妙な静けさだけが残る。
「決まった?」
黙ったまま考え込んでいる秋吉に少しキツい口調で聞いてしまった自覚はある。
「え、あ、うん、これにする。」
秋吉はそう答えると1冊本を取り、俺たちは書店を後にする事になった。
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トモダチか…。
俺は秋吉に言われた『友達』という言葉を反芻していた。
そして、その言葉が心に引っ掛かって心ここにあらずで、本屋を出た後秋吉と何を話したとか正直覚えていない。
いつもより少し早めに夕食を取る事になったのも、お互いなんとなくいつもと違う雰囲気を察してだったのだと思う。
憤りを感じてはいつつも、いつもの流れで「ウチまで送る」と言うと、「ありがとう」と秋吉から返ってきた。
駅で待ち合わせになったのは本当に用事があっただけで、やはり避けられている訳ではなかったのかと少しホッともする。
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