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「無理することない。気の迷いかなんかだったんだろ?好きだって言ってきたのも。」
そう言って秋吉を見ると、瞳が大きく揺れていていた。
さっきから秋吉は何も言葉を発していない。
俺が別れを切り出したから?
本当は秋吉から言うつもりだった…?
中学の時に俺がした事への仕返しなんじゃないかという思いが、また俺の中で湧いてくる。
「それとも仕返し?」
それでも、例え仕返しだったとしても。
それでも俺は…秋吉と付き合えて嬉しかったんだ。
「……ごめんな。」
秋吉の頭に手のひらをフワリと乗せる。
「もうしないから。秋吉の気持ちわかったから。終わりな。もう会わない。なんで付き合ってくれたのかわかんねーけど、嬉しかったよ、俺。」
秋吉の事、好きだから…。
もう言えないけれど。
秋吉が相変わらず何も言わないまま佇んでいるのを見て、俺は秋吉の体をそっと横に避け外に出ようとドアノブを手にする。
ドアノブを回そうとした瞬間、後ろからドンッという衝撃を受けて、少し体がフラつく。
自分の腹を見ると華奢な腕が後ろから伸びてきていて、巻きついているのが分かった。
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