キスの理由

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盆休みに地元に帰って来ると言った秋吉が、その流れで何気なく口にした事だったんだと思う。 「お盆と言えばさ、14日の花火って行ってる?私毎年真紀子と行ってるんだけど今年は真紀子用事があって行けないんだよね。」 全く俺に誘って欲しいとかそんな気持ちも持たず言った事だったんだろうと、この3ヶ月秋吉を見てきた俺は思った。 真紀子というのは秋吉の仲のいい友人らしく、5月のバーベキューの時一緒に来ていた子らしいが、正直顔は覚えていない。 秋吉の口から度々『真紀子』という名前を聞く機会があることを思うと相当仲が良いのだろう。 だから秋吉にとってはそんな『真紀子』と花火に行けないというただの報告だった訳で、でも俺はそんな些細な報告をチャンスに変えないほどウッカリ者でもない。 「だったら…一緒に行くか?」 これまでも色々誘って出掛けてはいるが、この『誘う』という行為に慣れる日は来ない気がする。 なんでもない事の様に口にしたが、心臓は断られることを恐れとバクバクと音を立てた。
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