キスの理由

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「行こう。」 「ありがとね、今年は行けないと思ってたから嬉しい。」 秋吉の弾んだ明るい声が電話口から聞こえ、朗らかな表情まで想像した俺は秋吉を抱きしめたい衝動に駆られた。 「そっか、それは良かった。じゃ、また盆に。」 その湧き上がる欲を抑えつける様にして電話を切ったのが数日前。 そして本日午後7時。 秋吉の家の近くの部落の集会所で待ち合わせ。 家まで迎えに行くとメールしたところ秋吉から集会所でと返事が来た。 「ごめん!待たせちゃったね。」 集会所に着いて数分しか経っていないので、それ程待ってはいない。 「別にそんなに待ってない。」と声をかけようと大きく開かれる車のドアの方に顔を向けたところで、そんなセリフは頭の中で消えていった。 反則だ。 完全に不意打ち。
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