キスの理由

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目だけで辺りを見回してみてもあるのは医院の古い塀くらいで、そんなところに寄りかかったら折角の秋吉の浴衣が汚れてしまう。 …俺じゃ嫌だろうか? そんな思いが湧き上がってくる。 …俺に寄りかかってくれたら。 決していやらしい思いからではなく、秋吉に少しでも楽になってもらいたいから。 そう、ただそれだけだ。 「そっか…。」 そう呟いて意を決した俺は秋吉の背後にまわり、そのまま欄干に腕を伸ばし後ろから秋吉を囲む形になる。 「えっ…。」 秋吉の驚いた様な声があがり、俺の方を振り向こうとする。 拒否されるのも、照れた顔を見られるのも嫌で俺は秋吉のオデコの辺りを押さえ、強引に秋吉の後頭部を自分の胸へと押し付けた。 拒否られる前に。
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