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嬉しいような逃げたいような複雑な感情が襲ってきて、心臓がバクバクとやたらでかい音を立てる。
出る決心をした俺は一つ大きく息を吐き、震え出した手で通話ボタンを押す。
「…はい。」
自分でも驚くほど情けない小さな声が出る。
向こうの返答を待つが、なぜか無言。
「もしもし?」
返事がないことを不審に思い窺うように尋ねた。
「……お母さん?」
……はっ?
携帯から聞こえてきたか細い声と、その言葉に俺は思考が止まる。
「美和だけど、風邪引いて…しんどい…。」
どうして俺がお母さんなのか頭をフル回転して考えていると秋吉からそんな言葉が届く。
「風邪…?」
「…うん…熱が…高くてしんどい…お母さん、助けてぇ…。」
明らかに男の声だろうにそんな事に気付く様子もなく、秋吉が俺の言葉に返す。
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