告げた理由

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「何でって電話してきただろーが…。」 けれどそんな事を考えていると気付かれたくなくて、半ば呆れたような口調で秋吉に返事をする。 「で、電話?」 「お母さん、風邪引いたー。助けてーって。」 「えっ…。」 そこまで聞くと秋吉は小走りで奥にある部屋へ進んでいく。 靴を脱いで秋吉の後をゆっくりと進んでいくと、秋吉はしゃがみ込んで携帯を確認していた。 「でもなんで佐伯くんが…。」 「知らね。間違えたんじゃねーの?」 「あ…お母さん“幸子”だから…。」 電話帳で上下にたまたま並んでいたといったところだろうか。 心当たりがついたのか、秋吉がそんな独り言を呟いた。 初めて入る秋吉の部屋は小奇麗に片付けられていて、所々女の子らしい小物が置いてある。 キス未遂で気まずくて連絡もとれず秋吉からの間違い電話にすがるように勢いだけでここまで来てしまったが、よく考えると女の一人暮らしの部屋にこうも簡単に上がってしまって良かったのだろうかと急に秋吉と2人きりのこの状況に緊張感を覚えた。
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