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秋吉が同僚からもらったという風邪ひきセットなるものにはもう予備はない。
…となると、買いに行くしかないか。
幸いにもこのアパートの近くにはコンビニがある。
秋吉を一人残して行くのも可哀想に思えたが、ほんの10分かそこらの時間だ。
「秋吉?ちょっとコンビニ行ってくる。これ家の鍵だよな?」
テーブルの上に置かれている小さなぬいぐるみのキーホルダーが付いた鍵を手に取り、秋吉の側に持って行き確認をとる。
焦点の合っていないような目で俺の手元を見ながら秋吉が小さく頷く。
「じゃあ、ちょっと行ってくるから。」
そう秋吉に告げて、ベッドの側から立ち上がろうとした時だった。
「やだ…。行っちゃやだ。」
秋吉の消えそうな声が俺の耳に届く。
「秋吉…。」
泣きそうな表情で、その顔はひどく幼く見えた。
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