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白熱灯の中にゆらりと浮かぶ秋吉の表情はぼんやりとしかわからないけれど、小さい子供が泣くのを必死に堪えているようだった。
途端、自分がどれだけ邪なことを考えていたか恥ずかしくなる。
「行かない。いるよ、ここに。」
思わず手を伸ばして秋吉の布団から少し出ている手を握る。
すると秋吉は安堵の表情を浮かべ、瞼を閉じた。
ごめんな…秋吉。
変な事考えて。
…花火ん時も…キスしようとしてごめんな…。
握るてから伝わればいいと、心の中で懺悔する。
「佐伯くん…。」
再び眠ったのかと思っていたら、不意に秋吉が名前を呼んだ。
「なんでここまでしてくれるの?」
秋吉が俺の顔を凝視してくる。
「遠いのに…明日も仕事あるのに。ただの友達にここまでしてくれるなんて佐伯くんい
い人過ぎるよ。なんでこんなに私に優しいの?」
秋吉を見つめ返しながら熱があるから普段より瞳が潤んでいるのかと思ったが徐々に鼻声に変わっていく秋吉の声に、それだけではないと気付く。
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