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彼女達の内の一人が僕に気付いた。ゆっくりと歩み寄って来る。私は逃げ出そうと思いながらもその場から動けなかった。
彼女との距離が一米を切る。改めて間近で見る彼女の顔はとても魅力的だった。端正な顔立ちと大きな瞳はそのゴスロリと相まってフランス人形の様な美しさがあった。
蕾の様な可愛らしい唇が開く。
「あなた、こういうの趣味なの?」
思いの外低い声が心を落ち着かせる。彼女の腕を見ると注射針の跡からまだ血液が滴っている。私はそのか細い腕に触れてみたかった。が、それは出来なかった。この美しい世界を、彼女を、壊してしまってはいけない。彼女に、神懸かった何かを感じていた。
「来週、公開ショーがあるわ。あなたも是非いらして。きっと楽しいわよ」
彼女は私の目の前で、下唇に突き刺した注射針を貫通させてその先端を見せ付け、少し照れながらあどけなさの残る美しい笑顔を浮かべた。
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