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これは夢だ、と彼女は思っていた。だから、それが逃れられないこともなんとなく理解できた。
*
帝国、フィリアス重工製最新型戦闘機のF‐634『ツルギ』のヘッドアップディスプレー(HUD)に映し出される照準を霞む視界で見ながら、敵レーダー施設を必死にロックオンしようと震える手
の中の操縦桿を握る。
『フォルナッ! 俺達にかまうな、撃てぇ!』
『グワァァァァァァッ!?』『し、死にたくねぇぇぇぇッッ!』『怯むんじゃねぇぇぇぇッ!』
後ろで、次々と仲間が撃ち落される様子を、通信機越しに聞きながら、彼女は引き金を引いた。
*
キキィィィ、と滑走路に着地した音を、半分意識がないまま聞き取って、減速のための操作を何とか
行い、減速する。
完全に止まった後、妙にゆっくり開くコックピットを見ながら、ふらつく意識を何とか保ってそこから這い出す。
数人の衛生兵などが、ふらつく自分を支える。
何人生き残った、と聞かれたため、ひどくうつろな声でこう答えた。
「…私…だけ…あとは、全滅…」
*
「辞令を出す。残念だが、君は左遷だ。」
そんな基地司令の言葉を聞いても、あまり驚きはしなかった。
非常に残念だ、などの言葉を聞きながらも、ただただ乾いた笑みを浮かべてこう言った。
「甘んじて、受けます。」
*
昨日の事、初めて彼女が戦死した仲間の墓に訪れたとき、
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