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カワイイ兵隊さん、とその老婦人に言われ、バツが悪そうな顔をする彼女。
百六十四センチと大柄ではない身長、自分でも常々軍に見えないと思うほど細身な体に、実年齢の十六歳にも見えない幼さの残る顔立ちでは、こういった評価も当然だと思えのだ。
「あなたみたいな若い子がねぇ…気をつけなさいよぉ、今みたいにぼ~、としていると、私の旦那のようにすぐ流れ弾で死んでしまうからねぇ?」
「は、はい! ありがとうございます!」
軽く会釈したのちに、彼女はやわらかい笑顔の老婦人と別れホームの間を繋ぐ通路の階段へと、今度は言われた通りに気を付けながら走って行った。
(…流れ弾、か。)
彼女の着る軍服は、全帝国軍共通の色のグレーの布地に、服の肩に帝国最初のジェット戦闘機『アマツバメ』を模したワッペンが張られたもの。
つまりは、空軍の戦闘機部隊出身という事である。
(…高度一万フィートじゃ、その一発で簡単に地面に落ちて天国行きだからなー…他人事じゃないな…あの時も……)
どこか、暗い顔でそう思いながら、若干速度の落ちた歩みで改札へ向かう彼女。
だが、元々大した距離もなく、すぐに改札へついてしまった。
「―――だから、これは開けられないと言っているでしょう?」
「だーかーらぁッ! こん中にあたしの身分証明書があるッつってんだろーがよォォ、口酸っぱくッ!?」
そこで見るからに気の強そうな背の高い赤毛の少女と、改札口の男性駅員がもめていた。
ちょうど近くにいた彼女は、二人のやり取りが聞こえていた。
「ですから、これは軍支給の鞄であり、預かった私どもとしては、これの中身を開示するにはあなたが帝国軍人である証明書を見せていただかないと、」
「何べん言やぁ、わかんだよ!? それもその鞄の中だってよォォッ!?」
一見、少女の方がウソを言っているとしか思えないが、彼女には少女の言い分が正しいと言う事が一目でわかった。
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