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もともと帝国は、自分と家族の希望があれば、十三才から軍へ入隊できる。自分もそうなので、今騒いでいる少女の様な軍人も決して少なくはないと彼女は知っていた。
そもそも、駅員は少女の格好を見て、一目で『陸軍出身』だとわからないのだろうか?
作業着にも見えるグレーのズボン、黒いランニングシャツ。その上、首にはわかりやすい金属性のアクセサリーにも見える認識票、通称『ドックタグ』がある。
典型的な、前線の陸軍の待機時の格好だった。
多分、普通なら駅員もわかって素通りさせるだろうに、とも思った彼女だが、駅員は良く見ればまだ若く(とは言っても自分より年上)だったため、わからないのも当然だと思った。
「…あの、すみません!」
だから、彼女は少女に助け舟を出すことにした。
「あ、あなたは通っても、」
「いえ、その鞄、開けてあげてもらえませんか?」
え、と疑問符を顔に浮かべる駅員に、途端に機嫌のよさそうな表情を浮かべる少女。
「マジか、助かった! わりぃ!」
「ちょ、ちょ、待ってください! こういう場合、その要求が通せるのは尉官クラスの将校でないと…」
「あ…ちょっと待ってください。」
そう言えば、大切な事を駅員のこの言葉によって彼女は思い出した。
急いで鞄の外側のポケットからとあるものを取り出して、首の部分に取り付ける。
それは、四角い形の金属で、その表面に、片側に三本の斜め線、もう片方に小さな星のマーク…正確には『帝国の花』である桜をかたどったものが存在する。
「…げぇ!?」
「嘘…!」
その『階級章』の意味を理解して、その場の二人はそう声をもらした。
「…改めまして、」
す、と鞄から取り出した自分の身分証明書を取り出して、彼女は言う。
「フォルナ・アーデ空軍『大尉』です。大尉権限で開示、できますよね?」
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