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「おい、下僕」
兄は弟のことをそう呼ぶ。
「はい、お兄様」
弟は兄を様付けで呼ぶ。
そうしないと兄が不機嫌になるからだ。
弟は兄の機嫌とりを、神経がすりきれるくらいに、必死で毎日やっている。
「さっきの、あれ、縄返せ」
「……………ごめん、なさい。切ってしまいました…」
「…………」
あ、やばい。
弟は身の危険を感じて、ゆっくりと後ずさる。
「……今日は風呂、一緒に入るか」
にっこりと、兄が笑う。
怖い、怖い。
目が笑っていない。
「…………はい」
恐怖の時間まであと一時間。
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