幼なじみ

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彼の部屋に入ると,きれいで昔と何の変わりもなかった。 久しぶりの再会に,いろんな話をして盛り上がっていた。 そして彼は見計らったように,先ほどのことを聞いてきた。 「ところでさ…さっきのことな…」 「裏切られたの。」 悠の話なんて聞かなくても,何をきいてくるかなんてわかってた。だてに長年の付き合いではないから。私は何の感情も表に出さずに話を続けた。 「えっ?それって…誰に?」 「亜美。知ってるでしょ?いや,亜美だけじゃない。長瀬拓也。あいつにだって…」 思い出して無性に腹がたった。怒りを抑えきれずに,悠に思いっきり怒鳴りつけた。 「私が何をしたってゆうの!?何で嘘つくの!付き合ってるならはっきり言えばいい!!親友なら隠し事なしだよね!?ねぇ?そうでしょ…?」 一通り思いをぶちまけて,怒りで抑えていたつらさが涙と共に溢れた。 「そっか…裏切られたんだな。亜美ちゃんと拓也に。でも事情がわからないから,もう一度落ち着いて俺に説明して?」 「うん…」 私は深呼吸をして,彼に話した。私が拓也が好きなのを亜美が知っていたこと,2人は付き合っているような雰囲気だったこと…そして,それを私に黙っていたこと。 「亜美ちゃんはお前に気を使って話さなかったんじゃないか?拓也のことが好きだったから,余計に言いづらかっただろうし。」 「でも,付き合ってるなら言ってくれれば…彼のことを諦める努力はしたのに…」 私は「諦める」という言葉を口にして,本気で諦めようと胸に誓った。 もう二度と決意が揺るがないように。 あの時のように。 「そっか…じゃあ今,あの2人が付き合ってるってわかって,もうあいつのこと諦めるか?」 「うん。諦めるよ。」 堂々と胸を張って答えた。しかし,心の真ん中に空洞ができた。何もないただの闇。それが埋まらないとわかっていても,進むべき道は一つしかないとわかっていたから。だから私はどんなにつらくてもその道を進むと決めたのだ。 好きな人を諦める。 これがどんなにつらいことか悠にはわかっていた。だから,悠は裕子をそっと抱きしめた。 「っ!?ゆ,悠//」 「俺…そのつらさがわかる。だから無理して意地はるな。」 「…っ…」 悠はただ泣く私をずっと抱きしめてくれた。 私はこの温もりにずっと頼って,縋って,離れたくないと思った。
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