1・お兄ちゃんは大変なんだ。

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……………… ………… …… 「にーにぃー、ぼくも遊ぶー!」 庭にある砂場へと向かう足を止めて振り向くと、妹がパタパタ駆け寄るのが見えた。もうっ!転んだらどうするんだよ! ……んぅ?にーにぃはボクの事だよ。 ・   ・ ニュクス兄ちゃん。名前と兄それぞれの頭をとって『にーにぃ』だって。なのにニーナは『にーねぇ』じゃなくて『ねーねぇ』なんだ。……もう、子供の考える事はわけが解らないね。 やれやれと首を振って、「女性が『ぼく』なんて使うなよ」と注意した。ボクはお兄ちゃんだから、こいつをしっかり教育してやらなくちゃいけない。 「んん。でもパパもにーにぃも『ぼく』って言うじゃない。」 隣に並んだリアンと手を繋いで、妹の小さな歩幅に合わせてテクテク歩く。 「それはパパもボクも男だからだろ?ママは使ってない。」 「たすーけつで『ぼく』でいいでしょ?」 「多数決は弱者を踏み……踏み躙る?行為だよ。数は少なくても正しい事ってあると思うけど。」 女性は『私』って言うべき! 「んー、でもぼくは『ぼく』がいい。ミハイル君が代わりに『私』って言ってくれてるじゃない。」 「んぅ。ミハイル君はお前が産まれる前から『私』って言ってたと思うけど。もう……仕方ないね。ボクはお兄ちゃんで大人だから、目を瞑ってあげるよ。」 「さすがにーにぃ。だてにアホ毛は立ててないね。」 「アホ毛は関係ないだろ?めっ!誰からそんな言葉教えられたんだよ!?」 「ねーねぇ。」 ちくしょう!あいつ何て事するんだ!ボクの兄としての威厳はズタズタだ!! 明日、登校前のお迎えで苦情を言ってやるからね! むぅっと口を引き結んで、漸く到着した砂場に妹と繋いでなかった方の手で持ってたお砂場セットを下ろすと、「スプーン貸して」と手を伸ばされた。あんまりだ! 「……スコップだろ?こっちのじゃダメ?」 「ギザギザのは上手に掘れないじゃない。ぼくはスプップ?がいい。」 そんなの、ボクだってスコップがいいに決まってるだろ。もう……妹じゃなくてお兄ちゃんが欲しいって頼めば良かった。ボクばっかり損してる。 溜め息を吐いてお気に入りの青いスコップを貸してあげると、仕方がないからエレボス君に貰ったお椀で砂を掬う。 ニーナもリアンも子供だからボクは苦労が絶えないんだ。でもいいよ。紳士は女性に優しくするべきだもんね。
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