0・女の子が欲しいです。

1/2
241人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

0・女の子が欲しいです。

【カミィside】 すやすやと寝息を立てながらシーツの上を泳ぐように撫で回す息子を愛しそうに見詰めて、お腹を優しくぽんぽんしてる夫に話を終えると、彼は困ったように溜め息を吐きながら身体を起こし、ポケットから取り出した手帳を開いて耳の蛇さんをぐにぐにと弄りました。 「そう。ニュクスが兄弟を欲しがってたの?……ああ、どうしようね。この子の望みは何だって叶えてあげたいし、ちょうど次の休みにこの子が君を譲ってくれたら期待に応えてあげられる可能性は高いんだけど。普段、僕の我儘で独り占めの日は寂しい思いさせてるのに、ニュクスの為の日を取り上げるわけにはいかないだろ。」 「……いくらお昼寝中だからって、あんた3歳の子供の前で何て事言ってんですか?と言うかその手帳は何?何でそんな正確に知ってるんですよ?」 「何でって。『君を愛してるから』以外にどう言えばカミィちゃんは納得出来るの?ねぇ、僕が他でもない奥さんの管理を怠ると思う?」 そんなデリケートな所まで管理しねーで下さい!いえ、本当にどうして知ってるんですよ?うちの夫はいつまでストーカーごっこを続ける気なんですかね!? 不思議そうに首を傾げながら手を伸ばして来た夫の膝へ招かれるまま座ると、頬擦りする彼が持つ怪しげな黒い手帳をじっとり睨み付けます。ねぇ、これ他にどんな事が書かれてあるんです? 「冗談はさておき。3は僕に馴染む良い数字だし、このまま3人家族がちょうどいいんじゃないかな?……ごめん。本当言うとまた君にあんな痛々しい顔をさせるのも、お預けくらうのもちょっと、ううん。相当嫌だ。カミィちゃんだって痛いのは嫌だろ?君が僕の家族になってくれただけで誰より幸せなのに、君にそっくりの可愛い息子まで産まれて……ねぇ、もう充分じゃない?」 ん、んん。別に私も喉元過ぎればってわけじゃないですけどね。 身体がバラバラに引き裂かれそうな程、痛い思いをした私より、『助産師だか何だか知らないけど僕以外に見せて堪るか』と猛勉強した挙げ句、実際にニュクスを取り上げてみせた夫の方が出産に怯えてるのが何だか納得いきません。 赤の他人や自分自身の痛みには平気そうにしてるのに、私やニュクスが掠り傷1つ負っただけで涙目になるかブチ切れる夫ですから仕方ない気もしますけど…… あとどさくさに紛れてお預けが嫌とか言われたのは凄く嫌です。けー君の破廉恥っ!
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!