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その時、聞き慣れた少し低めの優しい声が耳に届いた。
「…あ、紗綾…!」
それは、幼なじみの彗(すい)だった。
人懐こい笑顔を向けて、紗綾に近づいてくる。
「一週間ぶりだな」
鼓膜が小さく震えて、体全部で男を意識している。
こんなこと、今まで一度もなかったのに…。
「風邪、もう大丈夫?」
「…あ…えっと…」
「お見舞いに行っても、会わせてもらえないし。すげえ心配したんだからな」
「………」
「…でも、まあ、元気になって安心したよ」
こういう優しさは昔から変わらなくて、今でも大好きなのに。
それなのに、なんで体はこんなに震えてるの?
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