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「ケーキ、食べませんか?」
「ふ? ケーキ? なんで?」
何聞かれてるかいまいち分からない。
「はい? えっと、先輩が好きだから?」
蕩けた顔が真剣な面持ちに変化する。首を傾げた先輩は眉を潜めて俯いた。
「お腹、一杯でしたか?」
「食べる」
能面のようになってしまった先輩を見ながらさっきまでは可愛かったのに、と思ってしまった。
でも大丈夫。
生クリームのたっぷり塗られたショートケーキを先輩の目の前に置くと、目がキラキラ光る。
先輩が一番好きな食べ物だと豪語していた、イチゴショート。
30前の男でも、好きなものは好きなんです。
「今お茶淹れますから、食べててくださいね」
紅茶を淹れて戻ると先輩はケーキに釘付けだけど、食べずに待っていた。
いや、よく見ると、フォークで切った跡がある。
「あの、どうぞ」
「………」
先輩はじとっとした目で俺を見るばかり。
何だ何だ。調子狂うなぁ。先輩のこういう反応、初めてだ。相当酔ってんのかなと思う。
「あ、俺、ありますよ。ほらこれ、」
もしや一人じゃ食べにくいのかな、と思い箱から買っておいたコーヒーゼリーを出した。
「ね、これ食べますから」
コクンと頷いて先輩は食べ始めた。
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