次元DROP

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「しかしよぉツカサァ」 「なんだよ、トウギ」  ふとカーテン越しに窓の外を見たトウギに釣られて、光が差し込んでいる事に気付く。 「もうすぐ時間だぜぇ。俺的には今日中に美菜子ちゃんルートも終わらせたかったんだが自分でもびっくり道草食っちゃ味わって咀嚼して反芻(はんすう)してたからか、終わらなかったなぁ」 「まぁ、トウギは物語じゃなくてCGとボイスリピートばっかだったから、本当の意味で食ってたよね」  回りくどい言い方だったけどつまり、物語が進んだ副賞にばかり時間を取られていた、という事だ。 「でも確かに、すっきりしないね」  そう、もう時間だ。 「あーがっつりしっかりすっきりしねぇ。ちとシャワーを拝借ジャックさせてもらうぜ」  伸びをしながらトウギは、言葉の誤用に気付いていない。 「ちゃんと返してよ? いや、マジで」  シャワーをジャックするとか、それでいったい何をするつもりだ。  立ち上がって僕の部屋から出ていったトウギの背中を見送り、僕は画面を見疲れた目頭を押さえて、この倦怠感も一緒に吐き出してくれと祈りつつ深く嘆息した。  時計を横目に確認すると、既に朝7時を回っていた。日が昇ってから結構経っているらしい。  今日は月曜日。  また、始まる。  僕とトウギは昨日(日曜)電車で秋葉原に行きゲームやDVDを買い、帰ってきてからは今までずっとアニメ鑑賞やゲームをやっていた。  でも、それもひとまず終了。  今日から、また、学校だ。  三次元の集大成みたいな場所に行かなければならない。  正直、気は進まない。  だけど僕は、フェイスペーパーで簡単に洗顔を済ませ、制服に着替えてワックスで髪型をしっかり整える。  歯はまだ磨いて無いけど、洗面所は風呂場の手前にあるから、歯を磨いてて裸のトウギとばったり出くわし史上最悪のラブコメ(腐女子層が大喜び!)展開を迎えるのはまっぴら御免だ。だから、それは後にしよう(ラブコメ展開を、ではなく歯磨きをだ)。
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