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敗退
電車での帰り道に、電話がかかってきた。私は予備校での勉学を終え、どこか晩飯をとろうかと、智と電車に身を任せるように揺られていた。
マナーチェックの忘れられた私の電話のメロディが聞こえて、すぐに切ろうと思った。電車で取るなんて目立つことの嫌いな私には到底できることではなかった。しかし、私は思わず、とっていた。電源ボタンと間違って押してしまったからだ。私は身を隠すようにして、それを耳に当てた。
「浜崎さんですか?」、知らない女が言った。
確かに私は浜崎さんであるのだけど、彼女からの電話であるのに、私が浜崎であるか尋ねるなんて、名も名乗らないなんて…… 聞き覚えのない声だった。焦っていることだけは伝わってきた。
「はい。浜崎です」
「落ち着いて聞いてくださいね──」それを皮切りに、私の耳に嫌な情報が流れ込んできた。女の話が終わる前に、手から電話が抜けた。
母と父が交通事故に巻き込まれたなんて……
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