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ふと、扉が開き、制服を着た人物が現れた。
制服から察するに車掌だろう、背が高く、長い前髪に帽子を深く被っている為に、顔はよく見えなかった。
ただ、口元に僅かに微笑を浮かべているが印象的だ。
(車掌は、人間みたいだな。猫とかロボットだったら面白いのに)
おれは、そんな事を思いながら、おもむろにポケットに手を突っ込む。ふと、小さな紙に手があたり、それを掴み出した。
黒い切符で、おれの名前が書かれている。他には、生年月日のみしか書かれていない。
不思議に思ったおれは、その切符をじっと見つめていた。
「月岡静雄様で御座いますね?切符を拝見いたします」
車掌が手を差し出していた。
低いが、耳に心地よく響く声をしている。声や容姿からまだかなり若いと思える。
おれは、切符を手渡すと、車掌は、それを手に持ったまま、おれの正面に座る。
「あの、何か用ですか?」
「ええ、だからこうして、向かい合って座っているんですよ。ご理解できましたか?」
話し方は丁寧だが、やや慇懃無礼な態度がする車掌だなというのが素直な感想だった。
単なる夢にしては、凝ってるなと思い、おれは、座席に凭れ、車掌を見つめた。
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