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「さて、月岡様。あなたは、心に何か抱えていませんか?」
「!?」
車掌は、落ち着き払った声でおれに尋ねた。
相変わらず、口元しか見えない……口角をつり上げて笑っている車掌を見て、冷や汗が流れるのをおれは、感じた。
何を知っているんだ、コイツは。そもそも夢にしては、奇妙だと思い、おれは勢いよく頬をつねる……しかし、リアルに痛みを感じただけで、夢からは、覚める気配はない。
「月岡様、これは夢ではごさいません。現実です。頬をつねろうが、頭を壁に打ち付けようが、目覚めませんよ」
「現実って……いつ列車に乗ったんだよ!学校から帰って、飯食って、そのまま寝たのに…。つか、なんで列車が空を走ってるんだよ!」
おれは、目の前にいる車掌に思っていた疑問をぶつけた。
車掌は、相変わらず口元に笑みを浮かべたまま。
「この夜汽車は、心に何かを抱えた人が招かれます、今の貴方は、魂のみが此方にいるというわけです。実体は、家で眠っていますよ。証拠に貴方の足は透けています」
淀み無く答える車掌の台詞を聞き、おれは、足元に目をやる。確かに、足首から下が透けているのを確認する。 そして、再び車掌に目線をやれば、ソイツは、口角を僅かに上げて笑った後、口を開いた。
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