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「車内での暴力行為、または他の乗客への迷惑行為は、お止めくださいませ」
涼しい口調でそう言う車掌をおれは睨み付けた。お前のせいだって、と内心、呟く。
おれは、車掌を睨み付けながら、ゆっくり立ち上がり、座席に座ると、口を開いた。
「何なんだよ……アンタ」
「ただの車掌ですよ」
相変わらずの薄ら笑いを浮かべた車掌を見て、おれは問い詰めるのを止めた。時間の無駄と解釈したからだ。
心に何かあるとか言っていたのを思い出し、おれは現在、悩んでいるのを聞かせようと思い、口を開く。
「……おれは、このまま、どうしたらいいのか分からないんだよ。もう高三なのに、何をしたいのか分からないんだよ」
自分だけ、進路が決まらない、何がやりたいすら分からないのだ。なのに、周囲の大人は、おれを急かす。
〝早く決めなさい〟 〝先が決まってないの、お前だけだ〟 〝何で何も決めないんだ〟
それを言われたのを思い出し、おれは、膝の上に置いていた拳を握り締める。
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