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「……ああ、杉本三尉」
「はい」
「今晩、ちょっと飲みに付き合ってくれないか」
予想外の言葉に紘平は一瞬戸惑ったものの――。
「何故でしょう」と、冷静に訊き返す。
一方の隼人は親しげな態度を崩すことなく、小声で答えた。
「飲みニケーションさ。君とちと腹を割って話したいだけだ」
訝る端整な顔に、固い決意が滲む。
「――折角ですが、今夜は生憎」
「場所ここ」
紘平の言葉を一方的に遮りつつ、カウンターに暗褐色のカードをすっと置くと、
「じゃ、1930でよろしくー」
異議申し立ての隙を封じるかのように、屈託のない笑顔を紘平に残して、隼人は立ち去った。
「――……」
眉根を寄せ、やや険しい眼差しで紘平は隼人の背中を見送る。
長身が廊下の角に消えた時、口の端が不快げに吊り上がった。
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