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飲みニケーションのはずなのに。
「遠慮せずに飲めよ、杉本」
烏龍茶のグラスを手にした隼人に、紘平は苦笑しながら言い返す。
「佐伯さんこそ」
二人だけの懇親会を始めるにあたって隼人が先ず提案したのは、
「無礼講だ。互いを階級で呼ばない、思ったことははっきりと言う」
「……」
しかし戸惑いを感じたのは、最初の十数分間だけだった。
飾り気のない隼人の人柄なのか、旨い料理のせいなのか――人づき合いが億劫で苦手な紘平も徐々に自分を出すことができたのである。
隼人はつまらなそうに、
「俺一人で酒飲んだって旨いワケないだろ。――つーかこの烏龍茶、何杯目?」
「……三杯目……」
「烏龍ラブか」
「まあ……ラブですね」
紘平は普段からアルコールを口にしない。
二十歳の初ビールが旨いと思えず、それ以来だ。
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