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「ご質問に対しては正直――受け付けられないですね、僕は。……男と男なんて想像したくないし、できない」
「ふうん」
「第一、不自然だ」
思わず語気が強くなった。
「男と女には種を伝えていくという理由がある。男同士、女同士……不毛だ。無意味じゃ」
「繁殖できない点では確かにそうだ――けどな、必ずしも無意味じゃあないと思うぜ」
柔らかく言葉を返して、隼人はにっと笑った。
「……佐伯さんは、何故……」
ここまで呟くように言ったものの、二の句が継げない。
栗色の髪の男は「俺は」と一言発し、
「ご存じの通り、俺は男を抱ける男だ。何故そうなったのかは今でもよくわからない」
自嘲気味に唇が歪む。
「敢えて杉本にこの取っつきにくい話を出したのは、世の中にはそういう嗜好の人間もいて、必ずしもそれは悪しきものじゃないと知ってほしかったからだ」
隼人はグラスを手に取り、ちらりと紘平を見た。
「一応空気感染するようなもんは持ってないし、お前さんが目撃した件についても、無事故だ。安心してくれ」
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