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未遂に留めたのかもしれない。
そして訊いてみたところで、泣いていた理由は斎藤しかわからないと言うに違いない。
ああ、納得できない。
紘平は歯がゆい思いをぶつけようかどうか、タイミングと自分の覚悟を模索する。
「でもまさか……そこまでカミングアウトされるとは思ってませんでした」
「誤解されたままでいるのって、すっきりしないし」
そう言って微笑する隼人は、固い表情の紘平を一瞥し、烏龍茶を喉へ流し込んだ。
「じゃ、今度は俺から質問ね」
やはり明るい隼人の口調に、紘平は居を正す。
……見た目よりずっと短気だな、この子。
そして人見知りで人間嫌い。
気難しいなー……。
二人きりの懇親会は、調達課事務所で隼人が抱いた所見を裏づけることばかりだった。
当然、紘平が自分の話に納得していないのはとうにお見通し。
逆に少し突っ込んだ質問をしてやろうと悪戯の虫が騒ぎ始め、隼人はほくそ笑む。
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