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「……お願い」
これは、いたぶりがいがあるぞー……。
最初からピッチャーで頼めばよかったなと思いつつ、クールな雰囲気をどこかへ追いやってしまった紘平をもっと追い込もうと決めたのだった。
もう、しつこいな――……。
どうでもいい自分の恋愛話からなかなか話題を替えようとしない隼人に困り果てた紘平はつと思い出した。自分の部署のことをだ。
仕方ない――そう腹を据えると、
「あの、佐伯さん」
「ん」
「調達の皆さんも、今夜ここで食事するって話してたんですよ。見かけました?」
「いや」隼人は首を横に振って、
「合流したい?」
「というか……ウチの桑原さんが、佐伯さんとご飯に行きたいって言ってたもので」
真琴を引っ張り出した苦しい言い訳だった。
すると目の前の男は「へえ」と一言発してにっこり笑う。
「店内探して、いたら合流しようか」
「そうします?」
隼人があっさりと話に乗ったことに紘平は大きく胸を撫で下ろしたが、隼人には目論見があった。
いかにも奥手そうな紘平が女子とどう接するのか、見てやろうと思ったのだ。
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