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しばらく経った頃、ふらふらと立ち上がって洗面所で歯を磨き、よろめく体でベッドへ向かう。
着替える前に紘平が手を伸ばしたのは、枕元に置いたケース状の――ゲーム機だ。
ベッドの上にごろりと横たわり、タッチペンで画面に触れる。
すると。
『もう、コウちゃんてば』
可愛らしい少女の声がした。
『遅かったよっ』
非難されて、つい苦笑い。
「ごめんね、詩織……」
……ようやく、癒される……。
安らいだ微笑みを浮かべながら、目を閉じた。
――コツコツ、と硬い音がした。
目を開けた紘平は辺りを見回して、その音がカーテンの向こうから聞こえてくると気付く。
ベランダ……?
ぼんやりとした頭で「鳥かな」と考えつつ窓に歩み寄ってカーテンを開き、
「うわっ」
思わず声を上げて後ずさったが、無理もなかった。
『ここ、開けてくれ』
窓の向こう側に、口パクとジェスチャーで紘平へ訴えかけている隼人の姿があったからだ。
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