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「いやー、外よじ登ったの久しぶり」
相手の楽しそうな口ぶりとは逆に、紘平は眉間にしわを寄せる。
「じゃ、早く部屋に戻られてください」
「機嫌悪いな、杉サマ」
「今、何時だと思ってるんです――」
窓に鍵をかけて振り向いた紘平はどきりとした。
ベッドに腰掛けた隼人の手には画面を開いたまま置いてあったゲーム機――思わず叫ぶ。
「何してんですかっ」
「ん?」
きょとんとした隼人だったが、えらい剣幕でつかつかと歩み寄ってくる紘平の目的が手にしたゲーム機だと気付き、取り上げられる前にボタンを押してスリープ状態を解除し、中身をしっかりと見てしまった。
『どうしたの? コウちゃん』
「……」
長い黒髪の愛らしい少女が、隼人を大きな黒い瞳で見つめてはにかんでいる。
「……これ、って……仮想的恋愛ゲーム?」
手荒くそれを奪い返すと、
「ただのゲームです。気になさらないで部屋へお戻りください」
少しの間沈黙していた隼人が、口を開いた。
「……別に趣味なら構わんと思うけど」
にやと笑う整った顔を睨みつける、紘平。
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