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しかし紘平の剣幕にも動じない隼人はつまらなそうに、
「ちぇっ。ブレないね」
「ブレ……って、阿呆かー!!」
「ええ。阿呆ですが、何か?」
静かな、それでもおどけた答えと共に外されたベルトのバックルが涼やかな音を立て、
「――なっ」
相手が本気だと察して愕然とし、紘平は体を強張らせた。
捻り上げられたままの手首と肩が痛い。
だが体が訴える痛みより、これから起こることのほうが耐え難かった。
「やめ、――止めろっ」
紘平は叫んだ。
誰が、お前となんか――
「――は」
弾かれたようにベッドから身を起こし、汗だくになった紘平はしばし荒い呼吸を繰り返していた。
……夢、なの……?
カーテンの向こうは明るく、傍らには立ち上げたままのゲーム機。
ベッドの上に転がったタッチペンを見て心底安堵した紘平は、かつてなく深いため息をついたのだった。
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