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「この夢にはのぉ、一人の美しい女性が現れるのじゃ……」 ――黒いワンピースの女。 あるいは――黒髪の女。 呪いを受けた者がその夢を説明する時、必ず口にする言葉であると真柴は言った。 そして暗闇に浮かぶ洋館の前に立つ女性は、長い髪をなびかせながら……こう囁くのだと言う。 『早ク彼ト私を見ツけテ――』と。 夢の内容を聞いた零達は『彼と私を見つけて』と言う言葉に、何かが隠させているのだと感じた。 「真柴先生、その女性の言う『彼』と言うのは誰の事か分かるのですか?」 「うむ、君も薄々感じていると思うが、その『彼』と言うのは……恐らく、あの男の事であろう」 質問した零も関連性を考えると、昨夜襲って来たあの男以外には想像出来なかった。 しかしそれが誰であろうとも、夢に出て来る女性と『彼』と言う人物を館の中で見付けさえすれば、呪いの連鎖を止められるのではないかと、零は考えたのである。 「では、館の中でその二人を見付ければ、呪いを解けるかも知れないと言う事ですね?」
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