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真柴は重々しく頷いた。 「そのまさかじゃ……」 青ざめた表情で美香と翔が、零の左腕に視線を向ける。 「そして、麻美君のデキモノがあった場所……それは――左胸じゃ」 思わず美香は両胸を押さえた。 女性のシンボルと言える場所である。麻美が拒否したのも頷ける話であった。 「この方法はデキモノのある部分を切り取り、七日以内に燃やさなければならない。そうしなければ、また新たなデキモノが出来上がってしまうのじゃ。これをわしは――『増殖』と名付けておる」 想像するだけで悪寒が走る。 だが零達は話を聞いて、千堂の傷痕を思い出していた。 真柴の話し通りなら、千堂の傷痕は、不完全な処置を行った結果『増殖』をした事になる。 確かに千堂の腕には七ツの傷痕はあったが、新たなデキモノは見当たらなかった。 それを不思議に思った美香は、何気なく口にする。 「でも、大浴場で見た千堂さんの身体には、新しいデキモノなんて、なかったよね……? それに、あの軍人にも遭えなくなったって言ったし」
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