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「直接見た訳ではないが、その事であればおおよそ見当はついておる。転移と増殖の話をやつに話した時の慌てぶりを見ておるからの……」 「どう言う事ですか?」 美香と同じ疑問を抱いた零は質問をした。 「恐らく、転移をしたのじゃろう……」 「――え!?」 死亡以外にも転移をする、極めて稀なケースがあると真柴は言った。 それは不完全に印を切り取る行為を繰り返すと、呪いを受けている者が死亡したとみなされ、転移をしてしまう場合があると言うものだった。 零は、千堂の異常なまでの怒りを現す表情を思い出して納得をした。 もし、あの怒りが大切な人へ呪いの転移が行われた結果を意味していたとすれば当然だと。 それと同時に、もし自分の大切な人に呪いが移ってしまったらと考えた。 きっと自分も、千堂のようにやり切れない感情に襲われるのだろうと。 気付くと零は、美香に視線を向けていた。
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