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零の様子をじっと観察するように、真柴は見ている。
視線に気付いた零は、複雑な表情のまま顔を正面に向けた。
「四ノ宮君……君の覚悟は、わしにも充分に伝わっておる。しかし、この話を先にしたのは、君に選択肢を与えて置きたかったからじゃ」
真柴は、零の左腕を指差し言葉を続けた。
「幸い、その左腕の位置であれば、切断せずとも上手く取り除く事も可能な筈じゃ」
穏やかな声を向けられた零に、高校生三人はそれぞれの感情を込めたような緊迫した視線を集める。
特に真奈は、兄の事を思えば、ここで足を止める訳にはいかないと言った感じである。
だが、真柴から聞かされた事を考えれば複雑な心境と言えるであろう。
零は、真柴の優しさや三人の様々な感情を含んだ視線を受け、しばらく沈黙をした。
そして一瞬まぶたを閉じ、決意を込めた表情と共に――瞳を真柴に向けたのである。
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