存在しない世界

怨念

翌日、村は大変な騒ぎとなった。

原因は、夕方になっても帰らない娘を心配した母親が、身体に無理をさせてまで正臣の所へ訪ねて来たからだった。

当然、戻ったと思っていた咲枝が帰宅していないと知った正臣は、村長の所へ向かい事情を説明すると、村総出で捜し始めたのである。

ところがである。一向に咲枝を見つけ出せず、足取りも掴めない。

そのまま数日が過ぎ、一週間、一ヶ月といたずらに時間が過ぎる……。

勿論正臣の心は、何故あの時家まで送らなかったのだと後悔が増していく。正気でいられない程の苦しみを味わっていた。

そんなある日。あらぬ噂が村で広がり始める。

今まで、正臣に向けられていた同情の視線が――憎悪とも取れる視線に変化していったのである。

その村で広がり始めた噂とは、正臣が――――咲枝を殺し、山に埋めた…………。