怨念

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告白をした人物とは、村長の息子、黒谷武<クロタニ・タケシ>である。 以前より、咲枝に想いを寄せていた武は、あの日……パーティーで飲み過ぎたため帰り道で座り込んでいた。 暗い夜道で半ば泥酔し、道端で座り込む武を帰宅途中で見かけた咲枝は、気さくに笑顔で声を掛けて来たと言う。 そして、想いを寄せていた女性。 純白のドレスを着た咲枝の笑顔を見た武は、酔いもあり理性が保てず――事もあろうに、野獣の如く襲い掛かってしまったのだ。 突然の出来事に驚いた咲枝は、当然必死に抵抗する。 だが、拒めば拒むほどに武は逆上してしまった。 ついには咲枝を押し倒し事に及ぼうとするが、ここで武は正気を取り戻す。 いや、取り戻すしかなかったのである。 何故ならば、咲枝は倒れた勢いで頭を石に強打し、血を流したまま呼吸が止まっていたのだ。 正気になった武はあわてふためく。 咲枝を抱き起こし、身体を揺さぶるが……ドクドクと流れ出る血液で、純白のドレスが赤黒く染まるだけだった。
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