怨念

9/16
214人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
毎夜現れる咲枝の亡霊に怯え切った彼は、精神を侵されつつあった。そのため、救いを求めるように父親に告白したのである。 勿論話を聞いた村長は息子を咎めるが、息子ではなく、自分の信用を守るために驚きの行動に出た。 噂を利用し、それが真実であるかのように村人達を誘導し始めたのだ。 これにより、正臣に対する風当たりは一層に増す事になる。 言われのない噂によそよそしくなる村人。 揚げ句には、咲枝の母親にさえ娘を返せと言われる始末。 そしてある冬の晩、精神的に追い込まれた正臣は、村長を洋館に呼び寄せたのだ。 そこでどんなやり取りが行われたかは、記録にはない。 しかし最後の記録によれば、正臣は暖炉の前で頭を銃弾で打ち抜き、燃え盛る炎に倒れ込んだと言う……。 血も凍りつく、怨念に満ちた、言葉を残して――。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!