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毎夜現れる咲枝の亡霊に怯え切った彼は、精神を侵されつつあった。そのため、救いを求めるように父親に告白したのである。
勿論話を聞いた村長は息子を咎めるが、息子ではなく、自分の信用を守るために驚きの行動に出た。
噂を利用し、それが真実であるかのように村人達を誘導し始めたのだ。
これにより、正臣に対する風当たりは一層に増す事になる。
言われのない噂によそよそしくなる村人。
揚げ句には、咲枝の母親にさえ娘を返せと言われる始末。
そしてある冬の晩、精神的に追い込まれた正臣は、村長を洋館に呼び寄せたのだ。
そこでどんなやり取りが行われたかは、記録にはない。
しかし最後の記録によれば、正臣は暖炉の前で頭を銃弾で打ち抜き、燃え盛る炎に倒れ込んだと言う……。
血も凍りつく、怨念に満ちた、言葉を残して――。
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