目眩

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「――でっ!! ここからが重要なんだけど、いい?」 呆れた表情で彼女を見下ろし、青年は無言で立っていた。 「い~いっ!!?」 ツインテールの髪を揺らしながら大きな瞳を見開き、同意を求めている。 「分かった、分かった、続けてくれ……」 仕方がないと諦めた青年は適当に返事をしたが、その様子に彼女は不満げなようである。 「じゃぁ、続けるからねっ? ちゃんと聞いてよっ!!」 上下に小刻みに頷く青年の姿に気を取り直し、彼女は話を続けた。 その謎の事件が起こってからだいぶ後に、村人の中で結婚を約束した若い男女が居たんだけどね。 丁度、その時代は第二次世界大戦が始まった頃で、村からも数名戦争に駆り出されたらしいの。 その選ばれた人達の中に結婚を約束していた男の人も選ばれた訳よ。 そして、彼が出征となる一週間前に――その女性が消えてしまったんだって。 はじめ村人達は、婚約者の彼が出征することに耐え切れなくて、女性はどこかで心を痛めているのかと思っていたらしいの。
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