目眩

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だけど、すぐに戻ると思っていた女性が二日経っても帰る様子がないことから、村人達はまたあの事件の再来だと騒ぎはじめたらしいのよ。 でも、その時には館の主は病気で亡くなっていたらしいから、村人達は山狩りやら近くの村まで捜したりしたんだけど…… 彼女は哀しむような表情を作り、声のトーンを落とした。 結局、その女性を見付けることが出来ないまま彼の出征する日になっちゃったの。 そして、そのまま陸軍航空隊へ入隊した彼は……酷く悲しみ、落ち込み、嘆いたあげく。 彼の逆恨みかも知れないけど、その館を――――爆弾で吹き飛ばしちゃったのっ!!! 「びっくりでしょっ!? 自分の彼女の為に洋館を爆撃するなんて、ロマンチックよね~~」 と、佐々木美香<ササキ・ミカ>が嬉しそうに話し終えた所で、四ノ宮零<シノミヤ・レイ>は無表情のまま口を開いた。 「あー、びっくりしたよ。ロマンチックかどうかは疑問だが、問3の問題を早く計算しなさい……」 今は夏休み。大学二年生の零が、幼なじみの高校二年生である美香の受験勉強を見てあげている真っ最中である。 「あ~。もうちょっとだから、お願い聞いてっ!!  ねっ? ねっ?」
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