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目眩
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部屋中に鳴り響く――力強く、壁を叩き付ける音。
館中に充満する、むせるような血の匂い。
無数にある部屋の一室に数人の男女が追い詰められた。
「誰かあッ!! ここから出してくれえぇッ!!」
薄暗い部屋。窓はない。光源は壁に取り付けられた蝋燭と手に持つ懐中電灯のみ。
周りを照らせば、アンティークとも言える調度品が不気味に並べられている。
その内の一つ、重いタンスで彼等は扉を塞いでいた。
しかし、彼等は知っている。
その行為自体が全く意味のない事だと。
着実に近付いて来る、ズリズリと床を引きずる金属音。
少しずつ、確実に、扉の前へ……。
気配を感じた彼等は壁を激しく叩き――泣き、叫ぶ。
誰にも聞こえないと理解していた。
それでも迫り来る恐怖を紛らわすように何度も何度も、壁を叩く――。
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