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まぁ、理由は他にもあるんだけど。
暦は八月に入り、俗世の学生のほとんどが夏休みという時間を謳歌している中、オレが今日も着ているのは制服だった。
なぁに、その訳は簡単なものさ。我ながら情けないとも思う。
学生の本分といえば、勉強。その勉強が不十分だった。
成績不振もいいところで、ストライク三振バッターアウト。しかも、おまけに補習という名前のデッドボールつきときたら、夏休みを楽しむ余地なんてあるわけがない。
ようは、いわゆる落ちこぼれや劣等生といった不名誉な類いに属することになったのである。
オレが通う高校は神居山の麓にあるのだが、そんな辺鄙な場所にあるというのに我が校はこの辺の高校じゃあ間違いなくトップクラスの学力を誇っていた。
今さら後悔しても遅いのはわかっている。だが、あえて言わせてもらうなら凡人が通うにはすこしばかり無理があったようで。
なぜか運よく合格したところまではよかったのだが、人生そんなにうまくいくものでもなく。
入学してから最初に行われた学力テスト。
そこで月並み以下の点数をとってからというもの、オレの成績は低空飛行を続け、高二の一学期でついに、墜落。
とうとうこのままでは留年すらあり得るなんてところまで落ち込んでしまった成績をどうにかするべく、補習を受けることになったのだ。
最初は渋っていたオレも、教え子の将来を案じた担任が泣きながら説得してきたからには、さすがに首を縦に振るしかなかった。
遊びたいのに、遊べない。
高校生にとって、青春のページ数を増やすための大事なイベントであるサマーバケーションが、ただ悪戯に過ぎていくのを指をくわえて見ているしかないのだ。
そりゃあメランコリックな気分にもなる。
いや、それだけならまだマシだっただろう。
人っていうのは他とは違うものを、例えば――自分よりも劣るものを差別する。
その中でも学生と呼ばれる人種はなにより排他的で、残酷で、その傾向が顕著だった。
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