第一章 魔女と龍脈と邂逅と。

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 一度、負け犬のレッテルを貼られてしまったオレは、ものの見事に人間関係からもドロップアウト。  進学校がゆえの性質か、我が校は人間の格が学力で決まるような世界だった。  そんなところで、勉強においてバツ印がついてしまえばどうなるか。  簡単だ。元より少なかったオレの友人との間には、優劣という名の境界線がはっきりと引かれてしまった。  前まで笑って話していた友人たちは自ずと関わってこないようになり、オレを避けはじめ、挙げ句の果てには卑下するような視線すら向けるようになったのである。 「まったく、難儀なモンだぜー……」  補習を受ける。まだそれだけのことならば、ここまで落ち込むこともなかっただろう。  オレが全て悪いのは理解はしている。でも、だからといって、このモヤモヤがキレイさっぱり消えるわけじゃなかった。  考えれば考えるほど落ち込んでゆく気分は、終わりのない思考の螺旋階段のようで、底が暗く、終わりが見えない。  いくら考えたところで、変わりなどしないのに。オレという人間の往生際の悪さはどうしようもなかった。  後悔なんて意味がないのに。  現実逃避なんてしても仕方がないのに。  過去を否定しては、現在にうちひしがれる。なら未来は? 今日は昨日の明日。クソみたいな昨日(かこ)の明日(みらい)が今日(いま)なのだから、変わるはずがないだろう。  ひた向きに後ろ向きな思考の繰り返しは、例えるなら感情のデフレスパイラル。  諦めきれたらどれだけ楽なのだろうかと、心底自分を呪うしかなかった。 「ほんと、気楽そうでいいよな」  返事などない呟きは、蝉の音にかき消される。  ――あの空に浮かぶ雲のようになれたら。  いつも、そう思う。  おもむろに伸ばした手で雲を掴んでみても、手のひらの中には何もなくて、残ったのは虚しさだけ。  結局、オレが生きている世界は見かけ倒しの広さだけで、実際は窮屈なんだ。  そう、自由なんてどこにもなかったのだ。
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