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「―――さて、どうしたものか……な?」
―――澄み切った風みたいに、澄んだ声だった。
―――風に揺れる、長く綺麗な紫の髪が、何故か心躍らせる。
―――長い手足に纏う、褐色のロングコートが揺れる度に、胸は熱くなる。
―――紅い珠を錫杖に似た杖を手に持つ、その姿は不思議と勇気が湧いてくる。
―――古風な丸く厚手の眼鏡から覗く、頑なな意志を秘める瞳が、何故か絶望してた心に希望をくれた。
その姿を見て、私は無意識にだけど、この言葉を呟いた。
「……魔法……使い。」
「……!」
こっちを見た!
私の声に反応したのか、強い意志を秘めたその瞳に、私は心を奪われそうに……
「―――お前は後で記憶を消しとくか。」
「………」
………ええ、なる訳ないじゃないですか。
見られただけで、一気に冷めるこの気持ち。
気分は最悪。
凄まじく口が悪いソイツは、動けない私を強い意志……もとい、機嫌悪く睨みつけたりする。
……そうですよね?
あなたは最初からそんな人でしたねッ!?
事の始まりは、今から約二週間前に遡る。
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