001 私と『彼』

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―――1. 「―――きりーつ、礼!」 午後の授業が終了。 委員長の号令と共に授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。 時刻は15時。私は礼の後、着席して腕を伸ばして鈍った体をほぐした。 窓の外は、初夏の色が漂う、爽やかな風景。 そして、ホッとしたのも束の間、楽しくクラスメイトが周りで話す声が私の耳に入り、一気に気が滅入った。 この日は私こと、天導理緒がこの高校に転入してから1ヶ月が経とうとしていた頃だった。 偏差値の高い高校で、不安があった勉強はようやく慣れ始めたけど………単刀直入に言います。 未だ私には友達がいない。 出来ないのです。 ホームルームが終わって放課後。普通なら友達の一人や二人と一緒に、ありふれた順風満帆のアフタースクールライフが待っている。そう思う人が大半でしょう。 でも、私にはそんな友達は一人もいない。 何故か!? ……私がただ引っ込み思案なだけなんです。
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