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夏のあつい日、小学校1年生のゆうくんは近所をあるいていた。
友だちもどっかに出かけているしお母さんはいそがしくてつまらない。
「何かしようよ。」とゆうくんが言ったらお母さんは「ひるねでもしてなさい。」と言う。
「ぼくはもう小学生だぞ。」
ゆうくんはふてくされて外へ出た。
何かおもしろいことはないかと、ろじうらをのぞいてみたら、おくのほうに見なれないものがあった。
「ドアだ」
そう、そこにはうす緑の古ぼけたドアがあった。
ゆうくんは、すいこまれるようにそのドアをあけた。
「なんだこりゃ?」
ドアを開けたらそこには信じられないような風景が広がっていた。ギャーギャーとなく鳥の声、キィキィというサルのような声、そしてうっそうとしげる木々。
そこは森だった。
ゆうくんは少しこわかったけど、ひまなのはたまらないと思って歩き出した。
あまりに木や草が生(お)いしげっていたので、あのドアはすぐに見えなくなった。
「これってぼうけんだ。」
だれに言うともなくゆうくんは小さくつぶやいた。
まんがやテレビであこがれていたぼうけんが目の前にある。そう思うと自分がお話の主人公になったような気がしてドキドキわくわくした。
「あれは・・・?」
しばらく進むと遠くのほうに赤い火が見えた。ゆらゆらゆれているようだがはっきり見えない。
そして近づいてみるとその正体がすぐにわかった。
「イツボシテントウだ!」
そう、その火はゆっくりと動く巨大なてんとう虫だったのだ。高さはゆうくんの腰ぐらいまであり、真っ黒な目玉は特大のビー玉より大きかった。
「や、やあ。こんにちは。君はてんとう虫かい?」
てんとう虫とわかっていててんとう虫かと聞くのはまぬけな話だったし、てんとう虫が言葉をしゃべれないのもわかっているのに何か言わずには居られなかった。
「すごく大きいね。ぼくを乗せて飛べるんじゃないかい?ははは。」
しかしもちろん返事はなかった。でも虫のくせに逃げる様子がない。
「何かしゃべれよ。でないと背中に乗ってしまうぞ。」
ゆうくんは冗談のつもりでこういったが、それを聞いててんとう虫はゆっくりと回れ右をして、こっちに背中を向けて止まった。
「もしかして乗せてくれるの?」
てんとう虫は動かずじっと待っている。ゆうくんは勇気をふりしぼって背中(ムネの上)に乗ってみた。
「ひゃあ、冷たい」
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