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突然、男は笑うのをやめて呟いた。そして掴んだ蜥蜴を頭上の高さまで持ち上げ、その下で大きく口を開いた。 「返せ。俺を、返せよ」 生きたまま口の中に再び戻った蜥蜴を、男は強引に喉の奥に突っ込んだ。そしてそのまま、 ゴクリ――。 一気に胃の中へ。 「ははっ、お帰り俺、あははははっ」 男は立ち上がる。そして元いた机へ戻り、白紙の紙に黒い色を塗って、そこに赤い蜥蜴を書いた。上方には爬虫類図鑑。これで、準備は全て整った。 「お休み俺。次に目覚める時には、きっと上手く生きれるさ」 それだけ呟き、事切れたように男は眠りについた。永遠に終わらない追いかけっこを続ける為に、男は全てを忘れ、再びやり直せることをただ願った。 ∞
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